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世界のカトカラ

旧大陸


ロシアベニシタバ

Catocala adultera

東ヨーロッパからシベリア・中国を経由して樺太まで分布する。成虫は7〜9月に出現する。食樹はPopulusである。エゾベニシタバC.nuptaに似ているが、後翅の黒帯形状などが異なる。樺太まで分布しているのだから北海道にも分布しているかもしれない!
(写真はFinland産)


ハイイロベニシタバ

Catocala martyrium

中国四川省・云南省に分布する。前翅が青薄黒色で、後翅の中央黒帯が細いのが特徴的である。ベニシタバに近縁な種である。後翅の美しさはベニシタバ以上である。大珍品である。食樹は明らかでないが、おそらくヤナギ科植物である。

(写真は中国四川産)




オオベニシタバ

Catocala elocata

ヨーロッパからイランにかけて広く分布する。大型のベニシタバで、ウラルや西アジアから中央アジア、北インドにいくつかの類似種が知られているが、まだ整理されていない。また、スペインや北アフリカには本種によく似たC.oberthueriが分布する。成虫は晩夏から秋にかけて出現する。幼虫はSalixやPopulusを食樹とする。
(写真はSpain産)


ナガレモン

ベニシタバ

Catocala desiderata

西アジアから中央アジアにかけて分布する。やや小型のベニシタバで、前翅の横線等が消えかかって流れているような印象を受ける。食樹は明らかでないが、類縁種から推測して、本種の食樹はおそらくヤナギ科植物である。(写真はTajikistan)



アカハラ

ベニシタバ

Catocala sponsalis

北インドからインドシナ半島北部・中国にかけて分布する。ベニシタバC.electaに極近縁であるが、腹部が赤いので識別は容易である。食樹は不明だが、おそらくSalixとおもわれる。
(写真は中国湖北省産)                


ウスイロ

ベニシタバ

Catocala puerpera

ヨーロッパ・北アフリカから西アジア・中央アジアにかけて分布する。西アジアから中央アジアにかけていくつかの亜種が記載されているが、未だ未整理で亜種なのか別種なのか判然としないものがいくつかある。成虫は7〜10月に出現する。幼虫はPopulusやSalixを食樹とする。
(写真はHungary産)          


ヒメアカハラ

ベニシタバ

Catocala pacta

ヨーロッパ北東部からシベリアを経由し中国黒竜江省から樺太まで分布する。腹部が赤い小型のベニシタバで、他種との識別は容易である。成虫は7〜9月に出現する。幼虫はSalixを食樹とする。
(写真はPolska産)                


トルコ

オニベニシタバ

Catocala mesopotamica Kuznezov

美しい大型のベニシタバで、トルコからイランにかけての西アジアに分布する。入手が難しい種である。オニベニシタバの種群に含まれる。幼虫の食樹は不明だが、ブナ科と予想される。
(写真はIran産)


サバクベニシタバ

Catocala remissa

西トルキスタン・中央アジアからモンゴルにかけて分布する。比較的大型のベニシタバで、後翅がくすんだサーモンピンクになる。幼虫はおそらくPopulusかSalixを食樹にすると思われる。
(写真はKazakstan産)


ネズミベニシタバ

Catocala repudiata

中央アジアに分布する。一見、エゾベニシタバC.nuptaに類似する。しかし、より小型であること、前翅や後翅黒帯の形状で容易に区別できる。幼虫の食樹は不明であるが、ヤナギ食と予想される。
(写真はKazakhstan産)


トラフキシタバ

Catocala abacta

トルコからイラン・中央アジアにかけて分布する。えっ、これがCatocala! そうです。Catocalaです。やはりカトカラは奥が深いですね。よく見ると前翅・後翅の斑紋パターンは基本的に他のCatocalaと同じだ。パサパサした色調で、いかにも乾燥地に適応したCatocalaといった印象を受ける種である。
(写真はIran産)
          


イランヒメキシタバ

Catocala brantchi

小型のキシタバで、ギリシャから西アジアにかけて分布する。ヨーロッパ・北アフリカの地中海沿岸地方から西アジアにかけて小型のキシタバ類がいくつも生息している。そのうち食樹が判明しているものは、いずれもカシ類である。おそらく本種の食樹もカシ類だろう。
(写真はIran産)
 
          


タイワンキシタバ
Catocala formosana

台湾、中国南部、ラオス北部にかけて分布する。照葉樹林と関連が深いと考えられる大型のキシタバである。生活史は不明である。
(写真は台湾産)



新大陸


アメリカオニベニ

シタバ

Catocala aholibah

北アメリカ西部に広く分布する。オニベニシタバ種群の一種であり、食樹はオニベニシタバ同様カシ類Quercus属である。オニベニシタバより一回り大きく、なかなか見事なカトカラである。珍しいものではないが、西(北アメリカ)の関脇か小結といったところだろう。標本箱に一列は並べておきたい種である。
(写真は合衆国Utah産)


ノコメベニシタバ
Catocala concumbens

カナダ南部からNorth Carolinaおよびその西方に分布する中型のベニシタバである。前翅が灰白色で後翅はベニシタバC.electaに類似したピンク色である。成虫は盛夏に出現し、北部では普通であるが南部にいくにつれて少なくなる。食樹はヤナギ類Salixやポプラ類Populusである。
(写真はCANADA,Ontario産)             


ブロンズ

ベニシタバ

Catocala cara

カナダからFloridaおよびその西方に広く分布する。大型のベニシタバで、後翅の赤色帯の色合いや黒帯のパターンから他のベニシタバ類と容易に区別できるが、南部にツマジロベニシタバC.carissimaという近縁の別種がいる。成虫は盛夏から晩夏に出現する。食樹はヤナギ類Salixやポプラ類Populusである。
(写真はCANADA,Ontario産)     


マーブル

ベニシタバ

Catocala marmorata

大型のベニシタバである。前翅端下部から腎状紋を横切る暗色帯が特徴的である。北アメリカ東部の各所から記録があるが、稀な種である。食樹はPopulusである。
(写真は合衆国Indiana産)


ヒポダニア

ベニシタバ

Catocala briseis

Hudson BayからNew JerseyやPennsylvaniaおよびその西方にかけて分布する北方系の種である。中型のベニシタバで、前翅外横線と亜外縁線の間が白くなることが多いので他のベニシタバ類と区別できる。成虫は盛夏から晩夏に出現する。幼虫は、ヤナギ科のSalix属やPopulus属を食樹とする。
(写真CANADA,Ontario産)                 


イリアベニシタバ

Catocala ilia

北アメリカ東半部に広く分布する。食樹はカシQuercus類である。成虫は南部では4月中下旬頃から出現する。普通種だが、大型で素晴らしい種である。しかし胴体が太く、綺麗に軟化展翅するのはかなり難しい。ベニシタバと言っても実はオレンジ色である。また西部のものは後翅が黄色になる傾向がある。本種に極近縁な種としてニセイリアベニシタバC.umbrosaがいる。
(写真は合衆国Louisiana産)


ニセイリアベニ

シタバ

Catocala umbrosa

北アメリカ南部に分布する。食樹は不明であるが、おそらくカシQuercusである。成虫は4月下旬頃から出現する。成虫の外部形態からはイリアベニシタバC.iliaとの識別は難しいが、genitaliaが明瞭に異なる。何らかの理由で北アメリカ南部に隔離された個体群が、地史的に極最近(数千年前かもしれない)、短期間に変異しC.iliaから種分化したと考えられる。まさに種の分化は現在も進行中なのだ!
(写真は合衆国Louisiana産)


オレンジシタバ
Catocala innubens

カナダ南部からアメリカ合衆国東半部に広く分布する。食樹はマメ科のサイカチである。今のところ、唯一のマメ科食ベニシタバである。かなり特化しており、類縁種は知られていない。成虫は6〜9月に出現する。

(写真は合衆国Georgia)

   




ツレアイキシタバ
Catocala consors

北アメリカ東部に分布する。フチシロクロシタバ C.epioneと近縁な中型のキシタバである。成虫は初夏から盛夏にかけて出現し、クルミ科を食樹とする。マクロに見ると、フチシロクロシタバC.epioneより分布域が幾分南に寄っており、旧大陸のマメキシタバC.duplicataとエゾシロシタバC.dissimilisとの関係に類似するが、マメキシタバとエゾシロシタバの分化時期よりかなり新しいと思われる。
(写真は合衆国Florida産) 


ミワクヒメキシタバ
Catocala dulciola

北アメリカ東部に分布する小型のキシタバである。産地は局地的で非常に稀な種である。食樹はバラ科のCrataegusで、成虫は6〜7月頃に出現する。
 北アメリカには、バラ科食の小型キシタバが多く、識別も難しく、いまだに未記載のものもあり、多くの問題が残されている。
(写真は合衆国Michigan産)


新大陸のクルミ食クロシタバ
 北アメリカには、クルミ科植物を食樹とするCatocalaの1群が生息する。クルミ科植物を食樹とするCatocalaは、現時点では旧大陸から知られておらず、北アメリカに固有なものであり、主として東部の森林帯に分布する。今までに27種が知られている。そのうち18種の後翅が黒色で、9種が黄色である。黄色と黒色の種間では明らかに2組が、それぞれ近縁であることが分かっている。
 ここに現時点で知られているクルミ食クロシタバ18種全種を紹介する。


フチシロクロシタバ
Catocala epione


北アメリカ東部に広く分布する。食樹はクルミ科である。成虫は南部では4月下旬頃から出現する。本種はツレアイキシタバC.consorsと近縁であるが、他のクルミ科植物食のクロシタバ・キシタバ類とは地史的にかなり古い時代に分化しているとおもわれる。
(写真は合衆国Louisiana産)

   




アグリピナ

クロシタバ

Catocala agrippina

北アメリカ東部に分布するが、あまり多くない。前翅が赤褐色味を帯びている比較的大型のクロシタバで、成虫は6月頃から秋かけて出現する。幼虫はクルミ科を食樹とする。
(写真は合衆国Florida産)



アンガスクロシタバ

Catocala angusi

主に北アメリカの南東部に分布する。比較的大型のクロシタバである。成虫は盛夏に出現し、一般にあまり多くない。食樹はクルミ科である。ここに図示した個体は前翅基部と翅端から腎状紋にかけて黒帯を有する型だが、一般にはこの黒帯がない。
(写真は合衆国Indiana産)



アトカラクロシタバ

Catocala atocala

1985年に新種として記載された大型のクロシタバで、北アメリカ南東部に分布する。長い間、アグリピナクロシタバC.agrippina の1型とされていた。前翅の特異な斑紋で他種との区別は容易である。成虫は6下旬から7月上旬に出現する。♀成虫からの採卵により、幼虫がクルミ科を食樹とすることが判明した。
(写真は合衆国Louisiana産)



ウナダレクロシタバ

Catocala dejecta

北アメリカ東部に分布する。一般に稀で局地的である。成虫は夏から秋に出現する。前翅腎状紋の内側が顕著に白くなるのが特徴的である。食樹はクルミ科である。
(写真は合衆国Varginia産)



カリモガリクロシタバ

Catocala flebilis

北米のクルミ科植物食クロシタバ類の中では幾分小型の種で、前翅が鉛色を帯びた灰色である。北アメリカ東部に広く分布する。一般に個体数は少ないが、Floridaでは多産する場所もある。成虫は7月から10月にかけて見られる。
(写真は合衆国Indiana産)



ヒアイクロシタバ

Catocala insolabilis

北アメリカ東部に広く分布するが、北部ではかなり稀である。そのほかの地域でも一般に少ない。前翅内縁沿いが黒化し、また前後翅裏面がほとんど黒化するので、他のクルミ食クロシタバとの区別は容易である。成虫は夏に出現するが、南部では5月終わり頃から出現する。
(写真は合衆国Alabama産)



ユディトクロシタバ

Catocala judith

北アメリカ東部に広く分布する。クルミ食のクロシタバ類の中では最も小型であることで他のクルミ食クロシタバとは容易に区別できる。成虫は7〜8月に出現する。一般にあまり多くない。幼虫食樹はクルミ科である。
(写真は合衆国Wisconsin産)



クルミクロシタバ

Catocala lacrymosa

北アメリカ東部に広く分布する。中型のクロシタバで、前翅の斑紋パターンや交尾器はクルミキシタバ(C.palaeogama)に類似している。成虫は6月頃から秋かけて出現する。幼虫は、クルミ科植物を食樹とする。
(写真は合衆国Indiana産)



アイシュウノ

クロシタバ

Catocala luctuosa

北アメリカ東部に生息するが、分布域はまだ明らかでない。いままで、ナミクロシタバ(C.retecta)の一型として扱われていたことが多い。成虫は夏に出現する。食樹はクルミ科植物である。
(写真は合衆国Indiana産)



オオクロシタバ

Catocala maestosa
 
北アメリカ東部に分布する。一般に余り多くない。後翅の黒化したクルミ食のクロシタバは、今のところ18種ほど知られているが、本種はその中で最も大きい。成虫は盛夏から秋かけて出現する。
(写真は合衆国Indiana産)



クラヤミクロシタバ

Catocala obscura
 
北アメリカ東部に広く分布する。一般に余り多くない。後翅縁毛が白色であるのが、本種の特徴の一つであり、ウスクラヤミクロシタバ(C.residua)と区別される。成虫は夏から秋に出現する。食樹はクルミ科植物である。
(写真は合衆国Michigan産)



ウスクラヤミ

クロシタバ

Catocala residua

北アメリカ東部に広く分布する。一般に普通である。クラヤミクロシタバ(C.obscura)に類似するが、後翅縁毛が薄黒いので区別できる。しかし、後翅縁毛がかなり白い個体もあり、識別が難しい場合もある。成虫は夏から秋に出現する。幼虫はクルミ科植物を食樹とする。
(写真は合衆国Wisconsin産)


ナミクロシタバ

Catocala retecta
 
北アメリカ東部に広く分布する。一般に普通である。米名はYellow-Gray Underwingだが、地域的には前翅がYellow-Grayではない個体群も認められる。成虫は夏から秋に出現する。幼虫はクルミ科植物を食樹とする。
(写真は合衆国Wisconsin産)



ロビンソン

クロシタバ

Catocala robinsoni
 
北アメリカ東部に分布する。一般に稀である。クルミ科食クロシタバの中では幾分大型である。大きさなど本種と類似したアンガスクロシタバ(C.angusi)とは、後翅縁毛が白いので区別できる。成虫は夏から秋に出現する。
(写真は合衆国Indiana産)



カバフクロシタバ

Catocala sappho
 

Illinois南部やVirginiaからFloridaにかけて分布する。前翅が一様に白味を帯びており、腎状紋付近が樺色になることなどから、他のクロシタバ類と明らかに区別できる。クロシタバ類の中では最も美しい種である。成虫は盛夏に出現する。一般に稀な種である。幼虫は、クルミ科を食樹とする。
(写真は合衆国Louisiana産)



ウラルメクロシタバ

Catocala ulalume
 
北アメリカ東部に分布する。非常に稀である。成虫は夏期に出現する。クルミクロシタバ(C.lacrymosa)に類似する。前翅の横線や亜腎状紋の状態でクルミクロシタバと識別されるが、とても難しい。食樹はクルミ科植物である。
(写真は合衆国South Carolina産)



ヤモメクロシタバ

Catocala vidua
 
北アメリカ東部に広く分布する。一般に普通だが、北部では稀である。成虫は夏から秋に出現する。クルミ科食のクロシタバの中では比較的大型な種である。
(写真は合衆国Indiana産)





































   
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